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川の夢 [フライフィッシング]

仕事で岩手の山間にある集落に行った。
そこで、ここしばらく忘れていたようなトキメキ感に襲われてしまったのです・・・

前夜、盛岡の町でそこそこ飲んだ我々は、それでも翌日の朝一番にホテルの朝食バイキングをガッツリ腹に入れて車で出発した。
順調にドライブしても2時間前後はかかる距離だが、そこは仕事である。気が急く事も無く、それでも午前中の早い時間には目指す現場に到着した。

300世帯ほどが集まるその集落の中心に川が流れ、仕事の現場はその流れを眺める位置にあった。
 なんと綺麗な流れであろうか・・・。
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目の前の流れは砂礫主体の川底に所々大石が顔を出している。少し上流は小石底の瀬があり、さらにその上には岩盤際を流れる淵の上に橋がかかっている。水は清澄で、空が明るかった事もあってか川底やそこで泳ぐ魚達がきれいに見えるのだ。
この流れを目前にして、ナゼか、久しぶりに心がときめいた。
しばらく感じていなかった、あの釣りを始めたばかりの頃に川を見た時のアドレナリンな感じだ。

これで私もフライフィッシャーである。ここ数年こそ近所の川で気軽に済ませて来てはいるが、以前には南から北までそこそこ川を歩いているのに。
どこかで同じような流れを見たような、初めてのような、それでいてなんだか無性にこの川に入ってみたい。
釣りがしたいと思った。

この川は決して秘密の川ではない。釣り仲間の何人かに話しても、
「あそこはいい川だよね~」
と知っている人も多く、フィールドガイドで案内もされている。
そしてたぶん、同じような川でよりアクセスの良いフィールドはいくらでもあるだろうと思う。
しかしいかんせん都市から遠く、そう頻繁に足を向ける事ができる場所に無い。
それも自然状態と釣り人のバランスを保っているのだろうと思えた。
(決してその地理的な要因だけでなく、そこに住む地域の方々の中で行われた決断があったのだという話を聞いた。)


今年の仙台近郊の渓流フィールドは、ひどいもんである。
雪代の終わりかけ、さあこれから本番・・・という5月になって、各水域でサンプリングされた淡水魚たちから、食品衛生法の基準である100Bq/Kgを超える数値が次々と報告された。
7月現在、我が地元の広瀬・名取川水系のイワナ釣場はわずかに1支流域を除いて自粛要請が漁協より出されている。
私が仙台の、山に近いこの地に住み始めて4年を過ぎたが、その昔憧れていた「釣場まで30分圏内」が実現した事でフライフィッシングへの情熱は穏やかな温度に落着いていたのは事実である。
しかし人間の感情が不思議というか、己の人間性が小さいというか、「釣り自粛!!」と言われた事で逆に思いが募り、今年はやけに上昇傾向で情熱が戻りかけている。にもかかわらず近所ではフィールドが選べない、近所でない所へ行く程の時間を費やす事は難しいという若干釣りフラストレーションの中、この川が目前に現れた。
IMGP3351-2.JPG
同行した設計者達に現場調査をほぼ任せてしまい、私は心を奪われたその流れの畔の集落に1件だけの旅館が有る事を記憶に留め、再訪を期するのであった。


数週間後、仕事や生活の色々な部分にシワを寄せ、一人その川へ向かった。
作った時間は1泊2日。そのうち雑用と移動で各々半日はとられてしまうので、川に居る事のできる時間は初日の午後と2日目の午前のみ。それでもこの感じ、久しぶりだ。
インターネットの接続ができないでは何かと不安だが、携帯の電波もあやふやな場所なのでネット環境など期待もできない。それでもその集落に1件だけあった旅館に1泊と2食を電話でお願いすると、
「お客さん一人だけど、いいですよ」
と快い、心地よい返事を頂いた。

IMGP3363-1.JPG野暮用にナンダカンダと時間をとられ、ようやくあの流れを目にする事ができたのは既に14時を回った頃だった。
それでも昔のように視野が川だけになる事もなく、まずは宿に行き挨拶がてら釣り券を購入。ウェーダーを履いて、ようやく川へ。
はじめての川なので、一通り中流域から源流の車で行ける所まで眺めて車を流す。
集落のある中流域から源流域までそれ程長い流程ではないが、美味しそうなポイントはそこかしこ。
日のあたるプールを橋の上からのぞくと、期待通りにデカイ魚影が並んでいる。
あー、なんだかシアワセな時間だなあ。
そして久々に暗くなるまで川に浸かっていた。
IMGP3345-1.JPG

宿に戻る時、この川に惹かれていたもう一つの要因がこの旅館だった事に気付いた。
程よくくたびれた体を旅館の風呂でほぐしてから、たった一人の客の為に女将さんが準備してくれた心づくし一杯の晩御飯。
ビールと、地元の酒と、山海の幸がたくさんある晩御飯の間、一人で退屈な私にずーっと会話を付き合ってくださった。
 山間の集落なのに海の幸もある。実は三陸の海まで小一時間で出る事ができるらしいこと。
 ホヤを下ごしらえして冷凍しておくと一年中美味しく食べられるので、季節でなくてもホヤを出せる事。
 すぐ近くに日本一長い鍾乳洞があること。
 その鍾乳洞の近くで、ある季節になるとホタルが乱舞すること。
 このあたりの山には鉱物が多く埋蔵していること。
 地主の多くが鉱山会社に土地を明け渡してしまう中、この集落の地主たちは決して山を手放さなかったこと。
 そのために、今でも豊な山と自然が残っていること。
 不便の中の豊かさのこと。
 その事を次の世代に伝えなければならないが、ナカナカ難しいこと・・・。

そういうことをたくさん聞いて、私はこの川の本質が、どんどん好きになってきた。

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コメント 4

NaO

宮城の河川が一日もはやく
もとの環境に戻ることを祈らずにはいられません

素敵な川との出会い、良かったですね、、、、。
ホタルも見たいなあ、、
by NaO (2012-07-19 04:15) 

curtis

NaOさん、どーもです。

実際、今の宮城の川の数値を見て、これはいつまで続くのか?と考えると暗い気持ちになります。
でもこれも自分を含めた国民が、皆で選択してきた事の一つの結果だと諦めて、次にどうするか?を考えなくてはならないすよね。

オレは、多少不便になるのは我慢するから、もうこういう事が起こらないエネルギー政策に急転換してもらいたいなあ。

by curtis (2012-07-19 22:15) 

いずいず

この渓はなぜか?ノンビリできる素敵な渓ですな!

来シーズンからお気に入りに登録です。

ここでキャンプしましょうか!

または、

宿で宴会もいいですね。


by いずいず (2012-07-22 00:01) 

curtis

いずいずさん

まったくステキな川と里です。
1軒宿もあるし、バンガロー備えたキャンプ場もありました。

来シーズンといわず、もう今度の秋ぐらいには、釣りしてのんびりしに行きたいところです!!

酒屋とか、温泉とか探しときます。
by curtis (2012-07-23 23:17) 

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